思考のエンジン 2 ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー
Outline
我、書く、故に我在り Scribo ergo sum
- デリダによる「エクリチュール」
- 我々の世界は、どこが終わりか分からない。ぎっしりと「書き込まれた」エクリチュールの構成物である。無数の人によって「書き込み」「書き出された」エクリチュールの共同世界に生きながらせっせと書いている。
- 我々が存在するとはテキストを書いていることに他ならない。
- 自分が自身の生産するテキストそのものである
- 手書きのエクリチュールにこだわる作家の意見をまとめると
- 書くという作業を創造的な行為とみなし、
- 分かりきった意識を前もって準備した構造に合わせて説明するのではなく、
- 明確に意識化できないことを書くという作業、
- すなわちエクリチュールによって意識化しようとしている
- 1, 曖昧な意識を表面に浮かべ(書き)
- 2, その断片を丹念に拾い集めて納得いく形に構成し
- 3, 再びそれを書き直す
- 手書きのエクリチュールはもっと自由に断片的なテキストがお互いに絡み合い、一つの大きなテキストへ統合されていく
- タイプライター的思考においては、何を伝えるかが「書く」前に明確になっている
- 「ロゴス中心主義」
- 「イデア」の存在を仮定し、それを表現する体系を仮定する態度
- プラトニズム
- 無数に変化する経験世界の背後に「イデア」が、絶対的超越的に存在する
- 何か伝えることがあり、それを伝達するために考案される体系はロゴスを==現前==させることを前提とする
私たちの目の前にあるのはロゴスの現前ではなく、その「痕跡」だけである。
痕跡とは書かれたテクストにほかならない。
自分の手で書く人は、書くことが存在であり、
- 書かれたものはその行為を行った痕跡にほかならないことを体験している。
- 手書きで文章を書いている作家たちは、書くことの中で自分の存在を確かめている。
- 書く楽しみを味わい、
- 存在する自信を持つ
- 手書きのエクリチュールは生きていることを確認する体験を書き手に与えてる
2. 精神の社会 The Society of Mind
- 話し言葉(パロール)を紙の上に固定したものがエクリチュール(書き言葉)だ
- 文字は存在を証明する行為の痕跡ではなく、プラトン流にいうなら生命を持ち魂を持つ音声の不完全な転写である
- 話しているときに、人は存在している
- エクリチュールとしての書かれた文字がパロールを離れてそれ自体で意味する世界は無視される
- タイプライター的思考思考
- モダン
- 「ロゴス現前」の過ち
- デリダの主張ータイプライター的な思考の批判
- 人工知能の問題ーロゴス現前の問題
- 例:人間の知能とは何か定義する
- 人間の行動のなかで、どうしてそうやっているのは分からないものが知能である
- 人間の知能を説明する概念(ロゴス)はない
- 知能は理解された途端、単なる技法の集積となる
- 例:エキスパート・システム
- 人間の精神は一つの構造を持った機械ではなく
- 様々な部分からなる社会のようものだ
- 精神を持たない部分の寄せ集めが精神を生むという仮説
- 「精神の社会」
- 例:「積木の世界」
- エージェンシー
3. ソクラテス、彼は字を書かない Socrates, he who does not write. ーニーチェ
- このような世界は死の世界であるとデリダは言う。
- 書くことによって、
- ==エクリチュールに生きる==ことよって、
- 本は幻想であると感じることができる
- この体験は
- 現前の不可能性
- すなわち
- 書かれたテキストがイデアを必然的に表現すること出来ないことの認識となり
- 一つのテキストを様々に「読む」ことが出来ることの発見となり
- イデアというテキストの「指示対象」の排除となる。
- ハイパーテキスト
- 閉じられた本を開き、エクリチュールの連鎖にしてしまう仕組み
- ワードプロセッサー
- エクリチュールを形式な記号の連鎖と考え、意味を考えないで処理する
- WRITING
- エクリチュールを行うエージェンシー
- ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー
- 次章
- 評判の良い本(引用者注 文章読本)を参考に
- 想像的なエクリチュールを生成する人間の活動を構成するエイジェントを調べ
- その構造を検討してみよう。
- 空想的なライティング。エンジンを組み立てたい